水族館裏探訪 東日本大震災から126日。アクアマリンふくしまが再オープン!

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2011年08月15日
photo:S.K、text:茂木 みかほ(ダイブネット)
thanks:アクアマリンふくしま

2011.3.11。
大地震が東北地方を襲いました。
そして信じられない大津波があらゆるものを奪い去りました。
この地震で、福島県いわき市にあるアクアマリンふくしまも甚大な被害を受け、多くの生きものたちを失いました。
現在でもまだ原発や余震の問題に苛まれています。
そんな当館が、さまざまな苦境を乗り越え、開館11周年を迎える2011年7月15日、再オープンを遂げました。

大水槽前

津波が打ち寄せた3.11

大地震が起こった3月11日。
津波はものすごい勢いで、当館のある小名浜港にも打ち寄せました。
これにより、館内の1階部分と地下が浸水。
地下にある電気系統の施設が壊滅状態になってしまったため、水槽に酸素を供給したり、ろ過循環や水温維持が困難になり、水槽内の生きものたちが次々と死んでいきました。
大切に育ててきた生きものが、どうすることもできずに目の前で死んでゆく…これが飼育係にとってどれだけしんどいことか、生きものを飼ったことがある方ならわかるかもしれません。
結局9割もの生きものが死んでしまったといいます。
地震発生時、館内にはお客様約150名、スタッフ約80名がいたそうですが、全員無事だったのは、本当に幸いなことでした。

「復興」までの道のり

震災後早々に行われたのが、飼育生物の移動でした。
セイウチやゴマフアザラシなどの海獣類や、スポッテッドラットフィッシュやメヒカリ等貴重な生きものなど、生き残った生きものたちを、他の水族館に預かってもらうよう、スタッフは手配と準備に駆け回ります。
そんな中、気持ちを一気に前向きにしてくれるような嬉しいニュースも。鴨川シーワールドに避難したゴマフアザラシのくららが、なんと出産したのです。
「きぼう」と名付けられたその仔アザラシは、今元気に水槽内を泳ぎ回っています。
復旧作業が始められた当初は、まだ電気も水もない中でみんなで泥かきをする毎日だったそうです。
その後いろんな方の協力を得ながら、ペンキ塗りや水槽補修、生物収集などが進められてきました。
そんな最中、7月15日に再オープンすることが正式発表されます。
え?そんなに早く再開できるの!?と、誰もが思ったに違いありません。
でも、当館は本当に実現させたのです!
新たに、またここから始まってゆくストーリーに期待せずにはいられません。

きぼう

2011年4月7日に生まれた「きぼう」

ついに、再オープン!いざ、アクアマリンふくしまへ

被災後に始まった当館の「復興ブログ」。
被災してから復興までの日々のことが事細かに綴られています。
きっとご存知の方も多いと思いますが、私もこのブログを見ながらずっと応援し続けてきました。
これまでさまざまな苦労をしてきたのがわかっているからこそ、再オープンしたらすぐにでも見に行きたいと思っていました。
訪れた日は、7月18日。
オープンしてすぐの3連休の最終日でした。
ある職員さんに「再オープンおめでとうございます!」と声をかけると、「まだまだ。展示生物が目標の4割しかいないんだよ。これからだね、これから!」との返答が。
ここまで復旧するのも相当大変だったはずなのに…。
ただひたすらがんばり続ける姿には、逆に勇気をもらいました。
みんなが力を合わせ、また一から造られたアクアマリンふくしま。いったい、どのように生まれ変わったのでしょう!?
今回は、新生アクアマリンふくしまをご紹介します。

再オープン後、果たして展示はどう変わったか?

館内を見て、展示生物の数が少ない感じは確かにしましたが、どこもきれいに整備され、被害にあったことをまるで感じさせませんでした。
以下では、一部ではありますが、現在どのような展示が見られるのかをご紹介します。

1F

アクアマリンふくしまと言えば、「シーラカンス」。
貴重なシーラカンスの標本は無事整復され、今も展示されています。

シーラカンス

●2F

【潮目の海】コーナー
当館で一番大きな「潮目の海」水槽。
ここでは、黒潮の魚と、親潮の魚を見られます。

黒潮水槽
カツオとイワシ
カツオがよくマイワシを襲うため、マイワシは常に巨大な渦を作り、水槽の下のほうに集まっています

カラスエイ
大きなカラスエイが寄ってきて迫力満点

親潮水槽
オオカミウオ
まだ自分の居場所が決まらずウロウロしているオオカミウオ

【サンゴ礁の海】コーナー
サンゴの海
震災前は、水槽上部にツマグロ、中層にはキンメモドキの大きな群れ、そして底面にはチンアナゴがたくさん顔を出していた、私が一番好きだった水槽です。(上写真)
まさに海を切り取ったような景観が素晴らしくて、いつもうっとり見とれていました。
でも実は、この水槽が被害が一番ひどかったようです。
今では、セミホウボウやミノカサゴたちが泳いでいます。
アクアマリン開館当初から生きていた生物もいたので残念ですが、これからどう賑やかになっていくのか楽しみにしましょう。

【オホーツク海】コーナー
今でも他ではなかなか見られない生きものたちを見ることができます。

クマガイウオ
見た目も名前もかっこいいクマガイウオ

アバチャン
マニアにはたまりません。不思議な生きもの、アバチャン

ナメダンゴ
当館のキャラクターフィッシュでもあるナメダンゴ。たくさん岩にくっついています

【ふくしまの海】コーナー
このコーナーには、サンマやメヒカリ以外に、当館にしては珍しくアオリイカがマアジとともに展示されています。

アオリイカ
これまであえて飼育が難しいヤリイカやスルメイカに挑戦してきた当館ですが、今回は割と飼いやすいアオリイカを展示

3F

海獣コーナーでは、鴨川シーワールドに避難していたゴマフアザラシのくららが出産したBabyちゃんが見られます。
おかあさんと同じひらがなで「きぼう」と名づけられました。

キー坊
「キー坊」って、呼んであげてください

【熱帯アジアの水辺】コーナー
ランやマングローブなど本物の植物が展示されている熱帯アジアのコーナー。
残念ながら、私が好きだった立派なアジアアロワナやタメトモハゼたちは死んでしまったそうですが、徐々に生物が増え活気を取り戻し始めています。

熱帯アジアのコーナー
本コーナーでは、生き生きとした植物を見るのも楽しいです

【学習コーナー】
メッセージ
ここでは、たくさんの方からアクアマリンふくしまへ贈られた応援メッセージを閲覧できます。油断すると涙腺がゆるみます

4F

【ふくしまの川と沿岸】コーナー
4階はほとんど被害を受けなかったため、展示は震災前とあまり変わっていません。
イワナやヤマメ、水生昆虫、タナゴの仲間などの生きものをはじめ、福島県内に生育する植物が見られます。

ふくしまの河川
アカヒレタビラなどのタナゴ類が入るこの水槽は、自然循環させているため、停電時も問題なく飼育を継続できた水槽

アクアマリンえっぐ

釣り堀が家族連れで賑わっていました。
本コーナーは「命をいただく」がテーマ。
自分で釣った魚はその場で調理してもらい、食べられます。
ちなみに、ここで釣れるマアジは伊豆(県外各地)から取り寄せているものです。
海水の放射能レベルも問題ないことを確認した上で、お客さんに釣りを楽しんでもらっています。

釣り堀
体験型の釣り堀は大人気

釣り堀の調理場
自分で釣った魚を目の前で調理してもらえるのは嬉しい

大地震の威力を目の当たりにする

当館では、バックヤードも含め各所に地震の名残を見ることができます。

ポンプ
津波に飲み込まれた循環ポンプ。地下にあったため使用不可能に

津波が侵入ドア
地下にあるこのドアから津波が侵入。これで電気系統が破損

地下室設備
地下室には水槽維持に必要な設備がびっしり並んでいます

海水ポンプ室
地下にある海水ポンプ室。指差す位置まで水位が上がったというから驚きです

津波の映像
富原さんが撮影した津波映像。学習(情報)コーナーで見られます

がれき座
復興作業で生じた瓦礫を利用し作られたイベント用の舞台
がれき座

気になる放射能のこと

放射能の問題が心配されますが、当館では随時測定値を公表して安全に努めています。
海水の放射線量
「小名浜の海水をさわってみよう!」コーナーには、海水の放射線量が表記されています

アクアマリンふくしまでは環境放射線(空気中)と海水の放射線量を定期的に計っています。
また、ホームページにも掲載しているので、気になる方はチェックしてみてください。
※放射能についての詳細は、コチラから。

最後に

私は、何年か前に短い間ながらアクアマリンふくしまで働いていました。
自分の働く職場が大好きで、当館ではいろんなことを学ばせていただきました。
それだけに、やはり被災したときはショックが大きかったです。
正直、原発の問題さえなければ…と何度も思いましたが、今回こうしてまた再開した当館を見に行け、少しほっとしました。
生物の展示数はまだ少なくても、ここでしか見られないもの、感じられないことがたくさんあります。
みんなに愛されている水族館だと思うので、これからもがんばっていってほしいと思います。
そして、見に行きたいと思っている方がいましたら、ぜひ足を運んでみてください。新しいアクアマリンふくしまを体感できるはずです。

今回お話を伺った方

環境水族館 アクアマリンふくしま 地域交流課・課長補佐の富原聖一さん
富原聖一さん

今回は、獣医技師でもある富原さんに、地震当時のお話から飼育生物のことまでいろいろ聞かせていただきました。
とても興味深いお話をありがとうございました。

環境水族館 アクアマリンふくしま

住所:福島県いわき市小名浜字辰巳町50
電話:0246-73-2525
URL:http://www.marine.fks.ed.jp/index.htm

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