連載「珍魚・変魚発見隊」第三回

珍魚・変魚発見隊

2016年4月15日

毎月一回 各隊員が綴る珍魚発見記

これは、珍魚との出会いを求め、海を駆け巡る魚マニア(発見隊)のストーリー。
幼魚から深海魚まで、彼らは見たこともない魚を求め、各地を飛び回る。
磯に漁港に、魚屋に……。魚の気配がある場所は、目を光らせて観察し、目ぼしい魚を見つければ、どこまでも追いかけてゆく。水の中でもなんのその。
今日もどこかで、誰かしら、珍魚と出会いに感涙する……。

そもそも”珍魚”とは何なのか?辞書には、「珍しい魚」、英語では「rare fish」とある。なかなかお目にかかれない魚、ということだろう。ここではさらに、隊員たちが発見した見た目が変わった魚「変魚」も含め、紹介しようと思う。
珍魚(変魚)探しは、隊員たちにとって、まさに宝探しのようなもの。出会えた時の感激は、言葉では言い尽くせない。

ところで珍魚や変魚、いったいどこに行けば会えるのか?実は、意外とその辺にいる。少なからず、隊員たちは、そういう場所をよく知っている。
何も深海まで行かなくても、ちょっと意識を傾けるだけで、その辺の海で、誰でも珍魚・変魚に会うことができるのだ。
ここに登場する隊員は、水族館の飼育係、岸壁採集家、磯観察のスペシャリストをはじめ、とにかく生きもの好きな人、海あそびを得意とする人たちだ。
水場があれば、すかざす覗き込む彼らはまた、”観魚人(うおノゾキスト)”と呼ばれることも。
彼らがこっそり体験しているディープな世界を覗いてみよう。(毎月15日掲載予定)

 

隊員3号:特定非営利活動法人ディスカバーブルー事務局長・寺西聡子さん

寺西聡子さん

真鶴・三ツ石海岸にて生物解説をする寺西さん

 

突然ですが、私は「海育ち」の人間ではありません。
福島県の田舎の野山を駆け回って育ち、魚ではなくカエルをつかまえていました。幼い頃にテレビや漫画で見ていた「海」は青くキラキラ輝いていて、まさに憧れの象徴、神奈川県の海辺で海の自然や生物をお伝えする仕事についた今でも、そのイメージは変わりません。
今回、私がご紹介させていただくのは「レアもの」というほど珍しくないかもしれません。海になじみのなかった人間が、ふとした瞬間に出会い、心を奪われた(またはじわじわと気になり忘れられなくなった)、そんな生物たちを紹介したいと思います

 

ヒトデなの?ヒトデじゃないの?「クモヒトデ」たち

ニッポンクモヒトデ

磯でよく見られるニッポンクモヒトデ

 

私は現在、海の自然や生物のおもしろさをより多くのみなさんに知っていただきたいという思いから、特定非営利活動法人 ディスカバーブルーのスタッフとして、磯の生物観察会などのお手伝いをしています。とは言いつつ、海のことは、数年前に現職についてから目下修行中ですが、その修行の最初にインパクトある!と思ったのが、クモヒトデでした。
私が観察会などをしているフィールドは、主に神奈川県の西部に位置する真鶴町の海です。とても素晴らしい環境で、多くの生物が生息する豊かな海です。磯で干潮時に転石をひっくり返すと出会うことのできるクモヒトデ。想像以上に動きが速いので、びっくりします。宇宙人みたいで、くねくねするのではじめはタコかと思う方も多いのですが、うなずけます。ヒトデと同じ棘皮動物のなかまで、体のつくりは「5」を基本とするデザイン、腕も5本あります。「クモヒトデ」というグループに属しますが、「ヒトデ」とは別になります。真鶴の海岸ではよく見られますが、この変な形と動き、そして仲間の多さも、普通のヒトデに劣りません。どうにも気になる存在です。

 

アオスジクモヒトデ

赤いけど、アオスジクモヒトデ

 

アオスジクモヒトデの裏側

こちらもアオスジクモヒトデ。裏返すと、きれいなアオスジがある

 

実は、テヅルモヅルもクモヒトデのなかまです。腕は幾度も枝分かれしていて、なんだかもうわけがわかりません。一度見たら忘れられないこの生物は深いところに生息すると言われていますが、水深20m程度の漁師さんの仕掛けたエビ網にかかることも。生態などは、まだまだわからないことも多いようです。
ちなみに、漁師さんの仕掛けた網には、珍魚・変魚が入るチャンス多し、です。私の尊敬する海洋生物の先生方には、漁師さんと親しくされていた方もいて、たくさんの珍しい生物と出会うチャンスを頂いたと聞きました。

 

オキノテヅルモヅル

不思議な見た目のオキノテヅルモヅル。採集者:志村洋一氏、同定者:茨城大学 助教 岡西政典氏(場所:真鶴町)

 

真鶴の海がおもしろい理由のひとつに、海岸から比較的近い場所で、急激に水深が深くなることがあります。そしておいしい魚の町というだけあって、漁業がさかんで網が多く仕掛けられています。真鶴の海は、磯観察もオススメ、珍魚・変魚と出会うチャンスがあるかもしれません。ぜひ潮だまりや漁港の岸壁をノゾキにきてください!

 

そのオシャレは誰のため? ハスノハカシパン

ハスノハカシパン

江の島で出会ったハスノハカシパン。こう見えてウニのなかま

 

人生の中で数えるほどの大切な出会い、そういう瞬間はふいにやってくるもので、2年前の年の瀬、湘南江の島での出会いもそうでした。
「ん・・、え!これは・・・カシパン?」
"カシパン" とは棘皮動物・ウニのなかまです。良く見かけるイガ栗のようなウニではなく、平べったい体で、トゲも非常に細く短い。体が扁平なのにウニだと言われるとびっくりしてしまいますが、ちゃんと理由があります。カシパンのなかまは砂地に暮らします。砂にもぐって餌を集めるためには、体を平たくして砂に接する面積が広い方が有利なのです。ふだんは海底の砂の中にいる生物が、ときたま浜に打ち上がっているのを見つけることがあります。
標本などでスカシカシパンという大型のものは見たことがありましたが、それよりは遥かに薄く、繊細で、しかもほんのりピンク色。背中にはくっきりと花びらの模様、腹側にも控えめに花びら模様が浮かび上がっています。
割れないようにそっと持ち帰り、図鑑で調べて「ハスノハカシパン」だとわかりました。
「なんでこんなすてきなデザインをしているのだろう??」
ハスノハカシパンからしてみれば、生きていくために進化を重ねた結果という以外にないのかもしれませんが、いつも砂の中で、誰に見られるわけでもないのにと思ってしまうのです。
以来、その美しさはもちろんのこと、それが誰かが意識して考えたデザインではなく自然が作り出したものであり、さらにそこには生きるために必要な機能性も備わっていること、見られることのないオシャレをしていることに魅了され、カシパンを探し続けています。機能と美を兼ね備える自然のデザインは、私たち人間界のさまざまなデザインにもお手本になるようなことがたくさんありそうです。

 

三ツ石海岸

広大な磯が広がる三ツ石海岸

 

というわけで、常に海辺では下を見てしまいます。ビーチでも磯でも海辺では潮風を感じながら、下を向いて歩いてみてください。みなさんにも、ステキな出会いがありますように!

 

筆者プロフィール

寺西 聡子さん

寺西 聡子(てらにし さとこ)

福島県出身。横浜国立大学大学院環境情報学府修士課程修了

特定非営利活動法人ディスカバーブルー事務局長。幼少期は海遊びではなく、自宅周辺の田んぼや空き地で草花、虫やカエルをつかまえていた、どちらかといえば山(陸)育ち。大学で生物海洋学の研究室に在籍し、海洋バクテリアを研究するために海通いと真鶴町通いがスタートし、途中IT企業勤務を経て、現在まで続いている。

 

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