三陸オーシャンレスキューダイバーズが気仙沼・大規模サーチボランティアを実施

ダイブネットニュース

2012年3月7日

写真:野口智弘、臼井壯太朗、丹澤俊介、玉井正継

文章・動画:茂木みかほ

気仙沼・階上(はしかみ)漁協区で大規模サーチ

去る3月4日~5日に、三陸オーシャンレスキューダイバーズ(SORD)によるボランティア活動で、気仙沼・階上漁協区で大規模サーチが行われました。今回の目的は、海底の瓦礫を発見し、大きな物にマーキングをすること。この作業により、後のサルベージ船による引き上げ作業をスムーズにできるのです。

SORDは、高田佳岳氏を代表とする、フリーダイバーとスキューバダイバーによる海の再生プロジェクトを行う団体です。

今回私もこの活動に参加させてもらいました。簡単ではありますが、調査の様子、感じたことなどを率直にお伝えしたいと思います。

 

豊かな漁業資源を誇る三陸沿岸は、津波の影響を受け、漁業者のライフワークは壊滅的な打撃を受けました。

震災から1年経つ今も、海底の瓦礫はまだ完全には片付いていません。少しでも瓦礫が撤去できれば、また漁を始められるかもしれない…。そんな地元の人の想いを受けて、今回調査を行いました。

 

調査に参加したのは、スキューバダイバー10名、フリーダイバー6名の総勢16名。地元の漁師さんに、彼らが調査を希望する海域に船を出してもらいました。

 

●今回の潜水区域詳細は、こちらから。(Googleマップより)

青色でプロットしてある「階上漁協区 想定調査エリア」です。

 

1日目。ホッキ島~南のポイントをサーチ

1日目は、気仙沼湾・階上漁協区・ホッキ島から南のポイントの調査を実施。最初に透明度のチェックに入った高田さんからは「厳しいな…」の一言が。その言葉通り調査は苦戦しましたが、少しでも海底の状況を地元の漁師さんたちにお伝えすることができ、良かったです。

 

作戦会議

1日目。階上漁協に着いて、みんなで作戦会議

 

準備

出船前の準備風景。更衣室もシャワーもない場所で各々黙々と準備する

 

高田氏

NHKの取材を受ける、SORDの高田代表

 

天気は快晴。しかし前日の雪の影響もあり、とにかく透明度が悪い。水面で3m、海底では場所によっては50cmという悪条件。さらに水温は5℃…。確認できた生きものは、ウミウシ、ヒトデ、クラゲ、エイ、カレイ、ヤドカリ、ホヤなどがいました。

 

漁船で出発

地元の漁師さんが調査のために4隻も船を出してくれた

 

水深12~13mの海底付近に、何か大きい物が落ちていないか調査しました。

スキューバダイバーは皆でガイドロープを持ち、一直線に並びます。着底したら180℃の方向に一斉に進みます。

 

ホッキ島付近

ホッキ島付近の水中は透明度が悪く、ほとんど見えない状況

 

そして今回のサーチの目的である大きい物を見つけたら、スキューバダイバーは、各自に付けられたフロートのラインを大きく揺さぶり、海面にサインを送ります。

海面に待機したフリーダイバーは、浮きをつけたロープを持って潜行し、スキューバダイバーに渡しマーキングします。

マーキングされた物体は、5~6月のサルベージ船の作業で引き上げられます。

 

一見簡単そうですが、とにかく前後左右がわからないほど視界が悪い。底にはヘドロが蓄積し、少しでも巻き上げようものなら一瞬にして周りが見えなくなります。

冷たい、暗い、周りに人が見えない、何が出てくるかわからない。孤独と恐怖…。「無理をしない、何かあったらすぐにサイン!」と自分に言い聞かせ、とにかく安全第一を意識して潜りました。

 

1本目の調査は、特に大きな物の発見はなく終わりました。この辺の海域は、これまで深いところはソナーで大体調査されていましたが、浅い場所はソナー船が入れないため、今回のような地道な調査が有効になってきます。

漁師は魚礁を沈めるにも、いまいち本当に大丈夫なのか確信が持てずにいます。しかし今回のような調査で、特に大きい物が沈んでいなさそうなことがわかれば、安心して漁業することができるようになるのです。

 

乗船しているときに、漁師さんが言っていました。

「気仙沼湾一帯は、津波で牡蠣の養殖イカダを全部流されてしまった。でも少しずつだけど、牡蠣の養殖は再開してきているんだよ。あっちに見えるのが、牡蠣のイカダだ。あとはワカメ。ワカメは成長が早くて、今が収穫時なんだ。6月ころにはまた種付けが始まるよ。魚の漁に出ている人は、今はほとんどいないけど、いつになるかなぁ」。

そんな言葉を聞きながら、少しでも早くもっと漁ができるようになってほしい、と心の中で願うばかりでした。

 

2日目。鳥居~南のポイントをサーチ

2日目は鳥居から南のポイントをサーチ。海図では深さが3mとなっていましたが、地盤沈下のため6~7mほどでした。水温4℃。透明度1m。過酷な環境は前日と変わりません。

 

鳥居付近の海図

海図を見て、2日目に潜る鳥居のポイントをチェックする

 

船上

ポイントに向かう船の中、気合を入れるダイバー一行

 

透明度が悪いと、何かあっても直前にならないとわかりません。海底を注意して見ながら進んでいると、何やら白く光るものを発見しました。よく見ると、指が5本…手の形をしています。その瞬間「あ、もうダメだ…」と思いました。私の想像の中では、白骨化した人の腕を発見、になっていました。でも冷静になって見ると、それは白いゴム手袋でした。付近には洋服らしきものも落ちていて。人の痕跡を感じるものを見つけた時は、やはり気がピンと張り詰めます。

この日は、他のダイバーが丸太やロープなどいくつか大きな物体を発見し、マーキングすることができました。

 

2日目の鳥居

2日目の鳥居のポイントもやはり透明度が悪い。かろうじて白いフィンが確認できるほど

 

臼井さん

階上漁協でのミーティングにて。気仙沼の調査の際にいつもお世話になっている、臼福本店株式会社の臼井さん

 

暗く冷たい海の底では、これまでにない孤独感を感じました。と同時に、一緒に潜る仲間の存在がとてつもなく大きく感じられました。

津波で流され、いまだこの暗い海に取り残されている方は、とても寂しいだろうと思いました。

 

また今回厳しい海況の中、大活躍してくれたのが、東京海洋大学のダイビングサークルABYSSの学生諸君でした。海外のダイビングサービスで修行を積んでいる子も多いようで、若いのにとても頼もしかったです!

 

ラスト1本

ラスト1ダイブに向け、エントリーの準備をするスキューバダイバーたち

 

3月4日(日)「気仙沼大規模サーチ2日目 ポイント:鳥居の海底」

水温4℃。透明度1m弱。冷たくどんより暗い海。水深6mの海底には、海藻や布のような物体が散在していた。

 

調査する海の状況は常に変化するので、その都度どのような調査方法がいいのかを考えなければならなりません。冷たく透明度の悪い海では尚一層のこと、スキューバダイバー同士の意思の疎通、フリーダイバーとの連携、各々のスキル、お互いの気遣いなどが重要だと感じました。

 

被害が甚大だった鹿折(ししおり)地区を歩く

今回は海に加え、気仙沼の市街の様子も見ることができました。この辺で最も被害が大きかった鹿折地区。

どでかいマグロ漁船がごろんと横たわっていたり、倒壊した家屋がそのままになっていたり…。これには津波の破壊力を思い知らされました。辺りには瓦礫らしきものはほとんど見られないものの、家の土台だけが残る殺風景な景色を見ていると、復興は思ったよりも進んでいないように感じました。

 

荒野

荒涼とした風景が広がる鹿折の街

 

横たわった船

陸には今も、漁船が横たわっている。いまだ復興のめどは立っていない

 

マグロ漁船

巨大なマグロ漁船がありえない場所に打ち上げられていた。奇しくも私が住んだことのある福島県いわき市の船だった

 

マグロ漁船

こんなに大きい船の船首を目の当たりにすることは、めったにないだろう…

 

ガソリンスタンド

倒壊したままになっているガソリンスタンド

 

花束

打ち上げられたマグロ漁船の脇に手向けられた花束。大震災で亡くなられた方に、心から哀悼の意を表します

 

リアスシャークミュージアム

気仙沼リアスシャークミュージアムの前に横たわったままの漁船。いつ片付くのか…

 

最後に

初めて潜った気仙沼の海は、暗く冷たい海でしたが、潜れて嬉しかったです。

あの大震災から1年。私は今、普通に生活をしています。

だからといって、被災地のことを人ごとのように考えたくはありません。

まだまだこれからだから。今回現地に行って、現地の人の声を聞き、初めてわかったことがたくさんあります。一緒にがんばっていかなければ、そう強く感じます。海の恵みだって、三陸の海にはたくさんもらってきました。

これからも、自分にできることをしていきたいと思います。信頼できる仲間と共に、もちろん安全第一で。今後もSORD共々がんばります!

 

集合写真

地元の漁師さんとSORDのメンバー

 

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