荒俣宏氏の「海あそび塾」年次総会2016が開催されました

ダイブネットニュース

2017年1月21日

恒例となった年次総会の一部始終をご紹介!

集合写真

海あそび塾のお三方と、参加者のみなさん

 

去る2016年12月10日(土)、日本ペット&アニマル専門学校にて、海あそび塾の年次総会が開催されました。ゲスト3名を迎え、熱きトークが繰り広げられた後、新たな試みとして、参加者同士の交流会が実施され、海好きな人たち同士の情報交換も盛んに行われました。
約3年前、「磯あそびを文化に!」をモットーに始まった海あそび塾、今後もますます目が離せません。
それでは、当日の様子を簡単にお伝えします。

 

【プログラム詳細】
●ゲストトーク1: 黒柳都夫さん『2016年の岸壁 珍魚との遭遇』
●ゲストトーク2: 瓜生知史さん『海中房事観察第2夜』
●海あそびチャンネル公開収録 3話分
「吐いて・・・・吸えない? 昔のシュノーケル秘話」
「毎日検索リターンズ」
「Parasite Lovers」(ゲストMC:重城のり子さん)
●交流会アクティビティ

 

■ゲストトーク1: 黒柳都夫さん 『2016年の岸壁 珍魚との遭遇』

まずは静岡県在住で、海面に浮いている魚を研究されている黒柳都夫さんの発表から。
サヨリ科の稚魚の不思議な生態を紹介した。

サヨリ科の特徴は・・・
体が細長く、下あごが長く伸びている。尻びれ、背びれがかなり後ろにある。
産卵は5~6月で、雄雌が同数の群れを作り、流れ藻の中で産卵する。卵が産み付けられると、卵に付いている付着糸で流れ藻や卵同士が付着する。卵は、纏絡卵(てんらくらん)で色は淡いブルー。

 

サヨリの産卵について

付着糸を持つサヨリの卵と産卵について説明した

 

2016年9月下旬に、サヨリ科の中でも大変珍しい「ナンヨウサヨリ」の稚魚(体長34.5mm)を採集した黒柳さん。成魚は体高があり、体長30cmほどになるが、生態はほとんどわかっていないそうだ。この稚魚を見ると体高は低く体色は薄茶色、また下あごは太く変わった形で成魚とは全くイメージが違っていた。

 

サヨリの産卵について

ナンヨウサヨリは下あごの形が稚魚期と成魚期ではだいぶ異なる

 

「一般的なサヨリの下あごは針のように尖っているはずなのに、この稚魚の下あごを上から見ると平たくヘラのような形で大変驚きだった。それは "矛" そのものの形だったのだ。サヨリの仲間は下あごを触覚にして動物プランクトンなどを掬って食べるが、ナンヨウサヨリの稚魚のように平たくヘラのような形のほうが、効率的に捕食できると考えられた。しかし成魚になると一般的なサヨリのように細く尖った下あごになってしまう。どうして効率的にエサを掬って食べることのできる、あの便利な下あごの形をやめてしまうのか、理由は全く判らず謎のままだ。今後この謎を解明したいと思っている」。

 

矛に似ている下あご

ナンヨウサヨリ稚魚の下あごの形は矛に似ている (弥生時代の銅矛とソックリ)

 

サヨリはナンヨウサヨリと違い、稚魚から成魚になっても下あごの形は細く尖ったままだ。比較してみると稚魚の下あごは異様に長くバランスは良くないが、成魚では違和感がない。成魚になると下あごは縮むのかというと、実はそうではなく、大きくなるにしたがって下あご以外の部分のほうが成長が速くなり、最終的には成魚期の比率となってバランスが良くなるのだそうだ。

 

サヨリの下あごの長さは成長とともに変化する

サヨリの下あごの長さが成長とともに変化するという話もあった

 

■ゲストトーク2: 瓜生知史さん 『海中房事観察第2夜』

お次は、最近 "エロ水中写真家" として有名になられた瓜生先生。魚のエロ一筋30年。今回は、3本立てで貴重な映像を公開した。

 

瓜生さん

ゲストスピーカーの瓜生さん

 

【今回のテーマ3本立て】
①私、怒るとすごいんです
②ちょっとエロいカワハギの生態
③新書「魚はエロい」の超特急ダイジェスト(販売促進用)

 

①私、怒るとすごいんです

定置網に迷い込んだザトウクジラ

定置網に迷い込んだザトウクジラ。間近で撮影できるのは稀

 

昨年末、海あそび塾の年次総会で、特ダネとして静岡県富戸の定置網に迷い込んだザトウクジラの映像を紹介した。しかし大容量ファイルのため、音声が流れないトラブルに見舞われた。今回リベンジしようと瓜生さんが映像の編集をしていたところ、大変なことに気付いた!
ここからが、怖~い話のはじまり始まり。
「大きさ約10m、推定年齢2歳のザトウクジラの "テールスラッシュ" の話です。テールスラッシュとは、尾びれを横に動かす行動で大変危険なんですね。クジラは、一般的には優しい生きものと言われていますが、実は怒るとすごいんです。
撮影時は気付きませんでしたが、映像を見返す度に怖さが増します。クジラにかなり接近しているんですね~。あと数十センチずれていたらこの尾びれが頭にぶつかっていたかもしれません……」。

 

テールスラッシュするザトウクジラの雄

テールスラッシュするザトウクジラの雄。とても危険な行動

 

②ちょっとエロいカワハギの生態

オス同士の闘争風景

くるくる回るのは闘争のサイン

 

2匹のカワハギがくるくる回っている。夏前の繁殖期のオスによく見られる行動で、しま模様がよく出ているのはオスの闘争のサイン。
またメス同士の闘争もあるという。これは卵食といい、あるメスが産んだ卵を違うメスが食べてしまうことによって闘争が起こる。

カワハギの一番の特徴は、おちょぼ口。このおちょぼ口が有効活用される場がいくつかある。口から水を噴出して餌を探したり、潮に流されないように岩に噛みついたり、産卵床を作ったり。さまざまな場面で役立っている。
しかし、一番の出番は、産卵のタイミングだ。産卵が近づくと、オスはメスから離れなくなる。そして、放精したいオスはメスの耳元に息を吹きかける。ふっ、ふっ、と。すると、身悶えるメス……。

 

メスの耳元に一息かけるオス

オスはメスの耳にフッ

 

そして、産み終わった瞬間、パタッ……。イッてしまうメス(笑)。カワハギは、実に面白い産卵をする魚だ。

 

産卵後、横たえるメス

パタッ。産卵後、横たえるメス

 

③新書「魚はエロい」の超特急ダイジェスト

本書に書かれている魚のさまざまな "エロ" について、スピーディに紹介した。

クリーニングするゴンズイ

クリーニング中のゴンズイ。めったに見られない行動

 

クリーニングするゴンズイの話。ゴンズイは、体全体が舌のような器官になっていて、常に周りの仲間を舐め合っている状態。同じ味(フェロモン)の魚を仲間として認識している。クリーニングは一定の条件が重なるとやる珍しい行動。
ちなみに、ゴンズイの2つの群れを混ぜてみると……他の群れとは混ざらなかった。その群れごとの味(フェロモン)があるらしい。

 

マツバスズメダイも面白い魚で、なんとオスとメスでキスをする!

 

キスをするマツバスズメダイ

チュッ、チュッ。キスをするマツバスズメダイ

 

他に、以前テレビで放映禁止になったサザエの産卵のことや、今や伊豆のランドマークになった「オッパイカイメン」、世界で一番ゆっくりな求愛で知られるミサキウバウオ、交尾は一瞬の「マタナゴ」、メスの顔におしっこをかける「メバル」の話などなど、もっと聞きたいネタがたくさんだった。
詳細を知りたい方は、「魚はエロい」に書いてあるそうです(笑。

 

 

ここで、日本ペット&アニマル専門学校の藤田先生より、ご挨拶、学校についての説明が行われた。

 

藤田先生による学校紹介

藤田先生より、今回の会場となっている日本ペット&アニマル専門学校の紹介等が行われた

 

お手伝いしてくれた学生たち

会場にて手厚いサポートをしてくださった学生のみなさん

 

■海あそびチャンネル公開収録・3話分

ここからは、2016年9月からスタートした「海あそび塾」公式YouTubeチャンネルの公開収録が行われた。こちら三役(荒俣宏氏・さとう俊氏・鈴木香里武氏)が毎回1つのテーマや生き物について、ひたすら語り合うというもので、毎週1話ペースで配信している。今回は、公開収録3話分が行われた。

 

 

◆公開収録・その1「吐いて・・・・吸えない? 昔のシュノーケル秘話」

今や昔のシュノーケルはほぼ絶滅してしまったが、昔の道具はどんなものだったのか、貴重な現物を用いて検証した。

 

荒俣先生が海外のオークションで入手したシュノーケル

荒俣先生が10年間探して、ロシアのオークションで見つけたという1960年代後半のシュノーケル(左)と、フランスのオークションで手に入れたチョウチンアンコウのエスカみたいなシュノーケル(右)を披露

 

荒俣先生が海外のオークションで入手したシュノーケル

フランスのオークションで手に入れたシュノーケルは半分フルフェイス型で、先端の部分にピンポン玉が入っている

 

このピンポン玉タイプのシュノーケルは、玉が浮いて穴を塞ぐはずが、球がいうことを聞かず、事故が起きたりして、気付くとなくなってしまっていた。

 

次に、きっと疑問に思っている方も多いだろう「スノーケリング」「シュノーケリング」の話。ここでは、ひとまず「シュノーケリング」と呼ぶことにする。

 

「スノーケル」と「シュノーケル」、どっちが正しい?古い?オリジナルはどっち? これを徹底解析した。

「シュノーケル」はドイツ語で、アメリカでは「スノーケル」を使う。
辞典で調べたところ、1950年ごろにできた言葉ということ、消防車の意味があるらしいことがわかった。しかし、海遊びに関係がある言葉がなぜ消防車の意味を持つのか?

さらに調べるうちに、消防車の屈折ハシゴがドイツ語で「シュノーケル」と呼ばれることが判明。
そこで「ドイツ×海」で検索したら……「Uボート」に行き当たった!

 

Wikipedia によると、「シュノーケル(submarine snorkel)は、水中で潜水艦のディーゼルエンジンを運転するために用いられる吸気管で、名称は低地ドイツ語方言の「シュノルヒェル(鼻)」に由来する。」とある。

Uボートはディーゼルエンジンのため、水中で長時間運行するには、外から空気を持ち込むためのシュノーケル(吸気管)が必要だった。上方に吸い口があり、空気補給できる仕組みは、第二次世界大戦中の1938年に考えられていたが、実用化に向け実験段階に入ったのは1944年になってからのことだった。
悲しいかな、第二次世界大戦の海中戦が激化するに従い、潜水艦が海の中で呼吸できるように、と考えだされた「シュノーケル」。
戦争が終わってから、せっかく作ったのだから、とUボートのエンジンに空気を送る "鼻" のような道具が一般化されるようになったのだ。
そして、戦争でドイツが破れたことで、「シュノーケル」は英語になってしまう。スポーツダイビングでアメリカが使うようになって「スノーケル」となった。
そんなわけで、オリジナルは「シュノーケル」だったことになる。一つの言葉の裏には、驚くべき歴史が隠されていた。

最後に荒俣先生より「日本人が作った初期の潜水具を手に入れたら海あそび塾で実践をやりたい」とのお言葉が。その時を、楽しみに待ちたい。

 

◆公開収録・その2「毎日検索リターンズ」

公開収録2本目は、2016年10月中旬にカリブさんが房総半島で採集した魚について。このやけにメタリックなカワハギの仲間が何なのか、みんなで予想して調べてみようというものだった。
形はウマヅラハギ、大きさ3cmくらい。キビレカワハギの仔だったら非常に珍しいというが、果たして結果は・・・。

 

カリブさんが採集したやけにギンピカのカワハギの仲間

カリブさんが採集したやけにギンピカのカワハギの仲間

 

参加者に予想してもらうと……ギマ、ヒゲハギ、アミメウマヅラの名が挙がった。果たして、正解はあるのか?3役、それぞれ図鑑を引いて、調べていった。
荒俣先生は「原色動物大図鑑(北隆館)」、カリブさんは「原色魚類大図鑑(北隆館)」、さとうさんは「日本の海水魚(山と渓谷社)」を用い、生息域や形態の特徴から比較検討した。

 

「原色動物大図鑑(北隆館)」を紹介する荒俣先生

「原色動物大図鑑(北隆館)」を紹介する荒俣先生。イラストやレイアウトがきれいと絶賛

 

ここで、カリブさんから貴重な情報が……。
この謎の魚、少し成長したら、体の表面に毛が生えてきたそうだ。そして、体高が高くなったとのこと!

形からして、完全に "アミメウマヅラ" だと思ったそうだが……、特徴である尾の上の白点は出てこず、アミメ模様も出てこなかったそうだ。

というわけで、正解はこちら。
なんと、「メガネウマヅラハギ」だったのだ!

 

メガネウマヅラの成長過程

左の上下2枚が採集した日の様子、アミメウマヅラだと思ったのが右上、半月したら右下のメガネウマヅラになった

 

カリブさん自身もこんなに様変わりするとは思わなかったとのこと。
今回は、周りのいろんな人から、ぜひ育ててください!とのプレッシャーが強く、生まれて24年目にして初めて、魚を連れて旅行にいったのだとか。
残念ながら参加者が予想した回答の中に正解はなかったが、アミメウマヅラが一番近かったということで、回答者には賞品が贈られた。

 

アミメウマヅラと回答したそらりくん

アミメウマヅラと回答したそらりくんに荒俣先生より賞品が贈られた

 

◆公開収録・その3「Parasite Lovers」(ゲストMC:Juliaさんこと重城のり子さん)

収録3本目は、ゲストMCのJuliaさんを迎え、パラサイトトークが繰り広げられた。

 

寄生虫について語るジュリアさん

ゲストMCのJuliaさん。寄生虫の中でも特に親しみやすいというコペポーダについて語った

 

まずは、海の生物につく寄生虫のFacebookコミュニティ「Prasaite lovers」の紹介から。

「ダイバー以外の研究者なども参加していて、現在260人くらいのメンバーがいます。これまでに、大洗水族館や目黒寄生虫博物館で写真展を開催しました。来るもの拒まず活動しているので、ご興味ある方はぜひ。」

 

2017年に10周年を迎え最後となる「上方水中映像祭」のためにJuliaさんが作成した5分間の映像を紹介した。
テーマは、寄生虫の中でも見つけやすく親しみやすいコペポーダ。メダマイカリムシ、リュウノヒゲ、ハゼノワキザシなど。名前も見た目もユニークな寄生虫たちに、参加者一同くぎ付けになった。

 

寄生虫の説明

寄生虫の説明から。寄生虫とは、宿主から栄養(この写真では空気)をもらう虫のこと

 

顔にコペポーダがたくさん

ニザダイの顔にコペポーダがたくさん。目隠しされているようだ

 

他に、先日さとう俊さんが採ったチョウチョウウオの体表に付いていたコペポーダや、今回の参加者であり、甲殻類のスペシャリスト・ノブさんが出された寄生虫本についても語られた。

 

さとうさんお手製のコペポーダの乾燥標本

写真右上が、さとうさんお手製、コペポーダの乾燥標本(ボトル入り)

 

この公開収録の様子は、「海あそびチャンネル」にて要チェック!

 

■交流会アクティビティ

ラストを飾るのは、参加者同士の交流会。藤原ゆりさんをファシリテーターに迎え、趣向を凝らしたアクティビティが試みられた。

 

交流会のファシリテーターを務める藤原ゆりさん

交流会のファシリテーターを務める藤原ゆりさん

 

アクティビティの内容を簡単に説明すると……、ゆりさんお手製の海洋生物が描かれたカードを一人一枚もらい(みんな違うカード)、各自自分のカードの生きものの仲間を探す。カードを見せ合い、いろんな人と自己紹介し合って、共通ポイントを探すのだ。ポイントは、単に図鑑的に分類するのではなく、自由な感性でこれだと思う重なるポイントを見つけて仲間を探すこと。こちら10分間行われた。

 

交流会の様子

お互い自分の生物について紹介し、共通点を見つける

 

交流会の様子

情報交換した方の情報は忘れないように書き留めておく

 

その後、全員一旦着席。海あそび塾のお三方によってランダムに引かれたカードと同じ生物カードを持っている人が前に出て、その人が他のどんな生き物カードを持っている人と仲間になり、その共通点は何だったのか?それを他の参加者にクイズ形式で当ててもらった。正解者には出演者による豪華プレゼントが贈呈され、大盛り上がりの末、終了となった。特典として、ゆりさんお手製の海洋生物カードは参加者全員にプレゼントされた。

 

クイズに正解した参加者

クイズに正解し、カリブさんよりタカアシガニの甲羅を贈られた参加者の女性

 

クイズに正解した少年

クイズに正解した少年。未来のさかなクンか!? ご両親とともに関西から参加してくれた

 

最後に、参加した皆様には、魚研究者が必ず使っている『日本産魚類検索』などの本を次々に刊行している東海大学出版部の稲 英史さんからご提供いただいた非売品冊子『魚好きやねん』という非常におもしろくためになる一冊が、プレゼントされた。

今回も次々と驚愕の海ネタが披露され、大盛り上がりだった海あそび塾。これまで以上に、会場の一体感も感じられた。
磯あそびが文化になる日は、そう遠くないだろう。

 

参加者

海を愛するたくさんの方々が参加してくれた

 

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