シーパラで生体展示されたミツクリザメ
未知の生態に迫る

ダイブネットニュース

2013年12月3日

写真・文/茂木みかほ

深海魚「ミツクリザメ」 飼育を通して見えてきたものとは?

ミツクリザメ

 

横浜•八景島シーパラダイス(以下、シーパラ)で、11月14日より緊急展示された11尾のミツクリザメが、11月18日に死亡した。多くのメディアで話題になっていたので、ご存知の方も多いだろう。かくいう私も、11月15日に取材に伺った。

「ミツクリザメ」は、深海性のサメで、生きた姿をめったに見ることができない超レア種。生態が謎だらけな上、飼育記録も数少なく、水族館での長期飼育は困難を極める。

今回搬入されたミツクリザメは、11月13日(水)に、相模湾沖、水深約300mのタカアシガニ漁の刺し網にかかっていたもの。同日中に「アクアミュージアム」3階深海水槽(4尾)と、ドルフィン ファンタジーの円柱水槽(7尾)に生きたまま搬入された。その数、全部で11尾。シーパラの公式Twitterでも、「これだけの大量展示は過去に例がないと思われます!」と興奮ぎみにつぶやかれていた。中でも最大は約1.5mのメスで、外傷は比較的少なく、水槽内をゆっくりと泳いでいた。

シーパラのアクアミュージアムでは、過去において、2012年11月9日〜15日までの6日間の飼育記録をもつ。今回は、残念ながら飼育記録更新とはいかなかったが、担当者は「今までとは異なった環境下で飼育を試みることができた事で、新たな知見を得ることができました。今回死亡した「ミツクリザメ」は研究機関と連携して未知の生態が少しでも解明できるように努めてまいります。」とコメントしている。またいつの日か、生体展示されるのを楽しみに待つことにしよう。

今回、ミツクリザメについて、飼育技師の森田氏に貴重なお話を伺うことができたので、以下紹介する。

 

ミツクリザメの気になる疑問について、お聞きします!

 

森田さん

今回、質問に応じてくれた飼育技師の森田さん

 

今回、一度にたくさんのミツクリザメの若い個体が捕獲されたのはなぜでしょうか?

 

これまでにも、相模湾や駿河湾などで、刺し網にミツクリザメがかかった記録があります。相模湾沖では、毎年11〜4月にこの刺し網漁を行いますが、特に11月は、網にかかることが多いと漁師さんから聞いています。 まだ若いサメは、比較的浅いところにいることが多いと言われており、今回はちょうど彼らのいるエリア内に網が仕掛けられたことで、まとまった数が獲れたのではないかと思われます。

 

ミツクリザメの飼育が難しい理由を教えてください。

 

体が非常に柔らかく皮膚が傷つきやすいため、状態良く搬入するのが難しいことが一番の理由ではないかと感じました。多くの場合は、刺し網にかかった時に体表が擦れて、キズができてしまいます。そうなると、弱ってしまうことが多く、長く飼うのは難しいのです。あとは、やはり深海という特殊な環境にいる生物なので、環境の変化によって感じるストレスも多いと思います。水圧、水温、水流、光量、等々。深海と陸上では、状況がかなり異なってきます。サメは一般的な魚類にある浮き袋がないので、比較的圧力の変化に強く、持ち帰りやすい生物ではあります(浮き袋を持っている魚だと、陸に引き上げられた時、圧力の変化により口から浮き袋が飛び出したり破裂して死んでしまうことがあるため)。光に関しては、特に目などは紫外線のダメージを受けやすいことがわかりました。今回の経験から新たな発見もあり、飼育する上での改善点も見えてきました。今後は、スレによるダメージを最小限にするため釣り採集を行う、紫外線の影響が少ない夜間に採集、輸送を行い、屋内の照度を最小限にした水槽で飼育するなどの対策を講じていければと考えています。あくまでも飼育の目的は、未知の生物の謎を解明すること、貴重な生物が泳いでいる姿をみなさまにお見せすることです。また機会がありましたら、長期飼育に挑戦したいと思っています。

 

死因として、どんなことが考えられますか?

 

生きた状態で獲れたとはいえ、刺し網によるダメージは大きく、解剖の結果、内臓に外部からの圧迫が原因と思われる出血が見られました。これが大きな原因とみています。現在、さらに詳しく調べています。

 

今回の飼育を通じて気づいたことを教えてください(生態や飼育に関して)。

 

ミツクリザメは体が非常に柔らかく、遊泳力が弱いように感じました。今回搬入された11尾のうち7尾については、流れのある円柱水槽に入れたことで、泳いでいる姿を長く観察できた感じがします。他の魚でもそうですが、角がある水槽よりも円柱水槽のほうが方向転換がスムーズにいきます。ミツクリザメについても、初めて流れのある円柱水槽で飼育したことにより、壁、アクリル面への衝突を軽減できました。

 

ここからは、展示されたミツクリザメの写真を一挙公開

ミツクリザメ

今回初の試みとして、一定方向の水流があり且つ深さのあるドルフィンファンタジーの円柱水槽に展示されたミツクリザメ。マンボウとの共演はなかなか見られない

 

ミツクリザメ

こちらも共演写真。マンボウも思わぬ珍客にビックリ!?

 

ミツクリザメ

表層に、ミツクリザメが何尾か群れていた。一度に生きた個体をまとめて観察できるのはかなり珍しい

 

ミツクリザメ

ミツクリザメを横から見たところ。独特なフォルムがかっこいい

 

ミツクリザメ

前方から観察するとこんな形。口先は平たくヘラのような形をしている

 

ミツクリザメ

下から見たところ。平たい吻の縁は皮膚が分厚く硬くなっている

 

ミツクリザメ

「アクアミュージアム」3階深海水槽にいたミツクリザメ。ライトが赤色なのには理由がある。太陽光に含まれる赤い波長の光は、海中で特に吸収されやすいため、深海まで届くことはない。よって深海生物のほとんどは赤い光を認識できないので、ストレスになりにくいのだ

 

ミツクリザメ

こちらも「アクアミュージアム」3階深海水槽のミツクリザメ。4尾とも水槽の隅のほうを行ったり来たりしていた。この時の水温は、8℃設定になっていた

 

ミツクリザメ

バックヤードにて見せてもらった、捕獲時すでに死亡していたミツクリザメ。研究するため大切に保存されている。歯は鋭く尖っていて、補食する時は、上下のアゴが前方に飛び出して獲物を捕まえることができる

 

【ミツクリザメ】 (シーパラのHPより抜粋)

英名:Goblin shark(ゴブリンシャーク)

科名:ネズミザメ目 ミツクリザメ科

分布:相模湾、駿河湾、熊野灘、土佐湾、ポルトガル、スリナムなど

体長:最大全長約3.3m

特徴:長く突き出したヘラのような吻先が特徴のとてもユニークな体形をしたサメ。長い吻先にはロレンチニ瓶(電気受容器)が散在しており、海底の餌を探すのに役立っている。また、くちばしのような口には鋭いトゲのような歯が並び、魚類や甲殻類などを食べている。深海に生息するサメで、これまでの捕獲数も少なく、その生態は謎が多い。日本では、駿河湾や相模湾などの水深が1,200mにもなる深海で捕獲されている。

◆展示に関する詳しい情報は、コチラから。

 

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