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環境を考える ~今、私たちにできること~
環境を考える ~今、私たちにできること~

第五弾『お台場にみる「アマモ場造成」活動』を紹介
~アマモを通して、東京湾の環境を考える~



みなさんは「東京湾」と聞いて、どんな海を想像するだろう?
濁りきった茶色の水、腐臭漂う海、など多くの人は「汚れた海」をイメージするのではないだろうか。実際東京湾は、沿岸部の埋め立てや、流域人口3千万人以上によって出される生活排水などにより、本来あるまじき自然の姿を失ってしまった。頻発する赤潮、それに関連して起こる青潮、やれ貧酸素で魚や二枚貝が死んだなどと取り沙汰されては問題になっている。悲しいことに、かつて東京湾にみられた魚介類の豊富な生産性はもはやない。このような結果を招いたのは、紛れもなく私たち人間自身…。
しかしそんな厳しい環境下でも果敢に生きる生物たちがいる。近年、いくつかの漁業対象種が復活したり、一時的でも増殖した生物が確認されている。このようなことも関係し、昨今東京湾を再生させよう、とさまざまなプロジェクトが進行中だ。中でも東京都島しょ農林水産総合センターが行う「アマモ場造成」の実証試験は注目したいところだ。今や各地で行われている「アマモ場造成」だが、なぜそれほどまでにアマモ場が重要視されるのか? 果たしてお台場でアマモ場造成はできるのか? など専門家にお話を伺った。アマモを通じ、東京湾の環境問題について考えるきっかけとなれば幸いだ。

東京湾の埋め立ての変遷

沿岸部の色付けされた部分が埋め立て地帯になる。東京湾周辺はほとんど埋め立てられたことにより、自然の浄化機能をもつ干潟が激減した。また多くの河川から流れ込む生活排水などで内湾の環境は悪化。



■なぜ「アマモ」が重要なのか?

  • 産卵場や稚魚のゆりかごになる(稚魚の生育場、隠れ家となる)
  • 底泥、水中の栄養塩を根、葉から吸収し酸素を出す浄化機能がある
  • 草体は緩やかに枯れ、小型生物の餌になる(=陸上の腐葉土と同じ)
  • 浅場自然再生の環境指標となる


浅場の豊かな生態系は、海全体に恵みをもたらす

アマモから酸素が出ているのがわかる

アマモから酸素が出ているのがわかる



■「アマモ」って、なんだろう?

海草の仲間で、葉、根、地下茎で構成される
雌雄同株の種子植物

学名:Zostera marina
別名:竜宮の乙姫の元結の切り外し
分布:北海道から九州までの浅場

<アマモの生育条件>

アマモが育つには、下記のようないくつかの条件が必要と一般的に言われている。

  • 光量が充分なこと(透明度が年平均2m)
  • 水温5~30℃(1年を通して)
  • 塩分17~34%程度
  • 窒素、リンなどが吸収しやすい底質


■アマモ場造成の流れ



平成16年以降、お台場で実施しているアマモの移植試験。ここでは2004~2005年の事例について一連の流れを紹介する。

アマモの移植ポイント

フジテレビを背景に、アマモを移植するのは手前側
フジテレビを背景に、アマモを移植するのは手前側

第三台場の近くが移植ポイント
第三台場の近くが移植ポイント

1. 移植のため、アマモの自生地から株を採取することから始める

千葉県富津などから漁業協同組合の許可を得て採取してくる

2004年7月、富津にて。株を選んで採る
2004年7月、富津にて。株を選んで採る

海水に浸した新聞紙で覆った株を発砲スチロールに入れ、移植に備える
海水に浸した新聞紙で覆った株を発砲スチロールに入れ、移植に備える

2. 移植

移植方法については何通りかあるが、お台場のポイントへ移植する際には下記の方法にて実施

2004年11月、基準海面-40cm、-60cm、-80cmの3地点に移植する

移植直後のアマモとスナモグリの孔
移植直後のアマモとスナモグリの孔

地下茎をできるだけ長く採り、深植え(約10cm)し、末端をアンカー代わりに活用し株流失を防ぐ
地下茎をできるだけ長く採り、深植え(約10cm)し、末端をアンカー代わりに活用し株流失を防ぐ

3. 生長

移植した翌年3月には、移植株が約2倍に増加

移植後調子がいいと、株が更新されどんどん増える(地下茎の分枝や伸長で増殖)
しかし、お台場では7~8月頃に枯れてしまう。

4. 繁茂

アマモが繁茂すると、いわゆる「アマモ場」が形成される。葉上にはワレカラ類や貝類などの生物が付着し、メバルやギンポ等の幼魚も集まってくる。
また生長したアマモには花枝(かし)が形成され、種子ができる。

基準海面-40cm地点の草体。わずか畳1~2枚分のスペースにいろいろな生物が集まる
基準海面-40cm地点の草体。わずか畳1~2枚分のスペースにいろいろな生物が集まる

葉上をよく見ると、ワレカラや貝が付いている
葉上をよく見ると、ワレカラや貝が付いている

種が付いたアマモの花枝
種が付いたアマモの花枝

メバル
メバル

アマモの種

アマモの種

5. 消滅

透明度が悪化する翌年6月には深場(-80cm地点)から衰退し、一番浅場(-40cm地点)のアマモも8月には消滅した。

<移植後の問題点>

せっかくアマモを試験的に移植しても、さまざまな問題により生育が難しくなる。最も大きな問題はプランクトンが異常発生し、透明度が著しく低下してしまうことだが、播種試験や苗の移植試験を含めて東京湾での問題点について主なものを下記に挙げる。

  • プランクトンの異常増殖による、透明度の極端な低下(光量不足)
  • アカエイによる洗掘被害(防護ネット設置で防止可能)
  • フジツボ、イガイ類の被覆による光量阻害
  • 苗移植の場合、草食性カモによる食害

…これらを防止することが必要

エイの洗掘穴。この奥にアマモ
エイの洗掘穴。この奥にアマモ

こんなにも濁った水だとアマモまで光が届かない
こんなにも濁った水だとアマモまで光が届かない

フジツボやイガイの被覆のため生育できなくなることも…
フジツボやイガイの被覆のため生育できなくなることも…



■お台場のアマモ移植試験の結果

結果的に、透明度が好転する晩秋に移植したアマモは、翌年7~8月には光量不足のため衰退してしまうことがわかった。現在もアマモの生育環境が整っていないお台場では、継続して生育するのは困難。また株移植最適水深については、アマモが干上がらずに光が届きやすい「基準海面-40cm」付近だった。

深度別・アマモ生育推移 表からわかるように、「基準海面-40cm」のアマモが最後に消滅した

深度別・アマモ生育推移
表からわかるように、「基準海面-40cm」のアマモが最後に消滅した

<まとめ>

東京湾で、1年以上アマモが育たない主な原因は透明度の悪化。現在のままの環境では、アマモ場形成は難しい。

透明度悪化の主な原因として、「赤潮」が考えられる。光量が確保できれば、生育できる可能性はある。

赤潮(植物プランクトン)は、富栄養化などが原因。それらは生活排水などに含まれる窒素、リンなどを栄養源とし増える。

私たちの日常生活から出されるものが富栄養化の原因(現在の下水処理施設では、充分に処理するのは難しい)。生活排水が川から海に流れつき、閉鎖的水域である湾内に富栄養化をもたらす。また湾沿岸域の干潟が激減した影響も大きい。以前はアサリなどの干潟生物が窒素やリンなどを栄養源として、増殖した植物プランクトンなどをろ過し、漁業によって栄養物質を系外へ出してくれていた。そのため、河川から流れてきた栄養塩をある程度食い止めておくことができた。しかし現在は、その自然の浄化作用が機能していない。



■私たちにできること

アマモ場や東京湾のことをもっとよく知り、これ以上湾周辺部の環境破壊をしないことが大切

  • 日頃から自然に優しい洗剤を使ったり、油など水質悪化の原因となるものを流さないよう気をつける(環境改善には一人一人の行いが必要)
  • 実際にアマモ場を観察したり、大学などで開催される「東京湾」や「アマモ」のシンポジウムに参加するなどして、それらへの理解を深める
  • 一般の方が参加できるアマモの移植体験などに参加してみる

など



最後に

お台場のアマモ場造成はまだ厳しいのが現状ですが、何か私たちにもできることがあるはずです。実際千葉などのアマモ場に潜って観察してみると、実に多くの生物に会うことができます。その自然の豊かさに触れる度、この生態系を壊してはいけないなと感じます。みなさんも機会があればぜひ、アマモ場を観察してみてください。まずは、小さなことでもできることから始めてみましょう。



INTERVIEWER
東京都島しょ農林水産総合センター (旧 東京都水産試験場) 振興企画室 小泉正行さん

東京都島しょ農林水産総合センター (旧 東京都水産試験場)
振興企画室
小泉正行さん



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