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「オサカナ探検・おやじ倶楽部」セブに行く

photo & text  新野 大

「お正月明けに少し時間が取れそうなので、暖かい海に魚を見に行きませんか?」とありがたいお誘いをいただいたのが、作家であり翻訳家、博物学者であり…と書ききれないほどの肩書きを持つ荒俣宏先生だった。還暦の記念にと、ご夫婦でCカードを取られ、水中で呼吸ができることを覚えられたのだ。
ご自宅には大きな水槽があり、色鮮やかで個性的な魚たちの飼育観察をこよなく愛する先生が、水中で生の魚たちの観察にはまってしまったのは、自然の成りゆきだろう。と、この記事を書いているぼくももう52歳。荒俣先生と「お魚探検隊・おやじ倶楽部」を発足させ、今回は「マクロの新天地・セブ」へと向かったのだ。
普段からハゼやヨウジウオ、カワハギ、カエルアンコウと個性的な魚たちが好きな「おやじ倶楽部」は、マレーシアのマブールでマクロスポットガイドの達人でもあったYoshi平田さんがオーナーを務める、ピーコムドリームさんにお世話になることにした。


セブ島へ


セブ・マクタン島

セブまでは、直行便を使えば成田から4時間55分で到着する。しかしあいにく出発が月曜で直行便がなかったため、マニラ経由でセブに入った。搭乗手続きなどにやや手こずったものの、ほぼ定刻でセブ島・タクマン国際空港に着陸。
熱帯地方独特の湿気を含んだ生暖かい空気がまとわりつき、一気に汗ばんできた。お迎えのピーコムさんのスタッフと出会い、空港を後にしたのが17:00過ぎ。これから行くリゾートは飛行場にあるマクタン島にあるので、順調に行けば15分ほどで着くということだか、夕方の渋滞のせいで30分以上かかり、リゾートに到着したころは陽もだいぶ傾いていた。
 リゾートは13棟のコテージが並び、ダイビングの講習も受けられるプールがきれいな水をたたえていた。入り口には守衛さんがいて、一般の人が出入りする事はできない。まったくのプライベートリゾートで安心だ。

リゾート プール

まずは入念なブリーフィング

一息つき、夕食を食べるため早めにレストランに行くと、荒俣先生はYoshiさんと、滞在中につきっきりでガイドをしてくれた稲見さんと明日の観察ポイントについて話をされていた。先生の大好きなベニハゼやアオギハゼの仲間の未記載種がゴロゴロいることや、小型のソフトコーラルを隠れ場にしている小さなカワハギ「RADIAL FILEFISH」の話をお聞きになり、是非明日それらを観察したい、ということになった。
食事を食べながらも、Yoshiさん、稲見さん、トモさんをはじめゲストの皆さんがダイビング&魚談議に花を咲かせていた。洞窟というより、穴にたくさんいる「シマクダリボウズギスモドキ」や「ベニハゼ」の未記載種の話に時間が経つのもアッというまだった。


おいしい料理

ダイビングの前に、到着した日にいただいたおいしい夕食を紹介する。
食事は、Yoshiさんが毎日献立を考え作っているそうだ。そのメニューの実に豊富なこと!新鮮な野菜をたっぷり使ったサラダや葉野菜のソテー。特に野菜を細かくカットしたコールスロー風サラダはとても美味しかった。
日替わりの魚の刺身については、今回3回ほどいただいた。ヒラアジの刺身、サワラの炙り、アオリイカの刺身がウミブドウなどの海藻を敷いた上に盛られていた。
揚げ物もおもしろいものがあった。インコハゼの一種の天ぷらは身は厚いが軽味で、塩をちょっとつけていただくとこれまた絶品だった。小型のヒメジのフライもたまらない。それらの中落ちはカラッと揚げてなんと骨せんべいに。これも酒のつまみにもってこいだ。
3日目には荒俣先生が大好物のメンチカツが!とはいえ、油ものを控え中だった先生用にキャベツを多く使った特製メンチカツが登場し、先生も大喜び。その他毎回大皿にパスタが盛られ、茹でたガザミの身をほぐして混ぜたりするともう止まらなかった。


アオリイカのお刺身

新鮮な彩り野菜

これをパスタとからめると最高

インコハゼsp.の骨せんべい


いよいよ、ダイビングステーションへ!

ダイビングステーション


船

いよいよ、7:30にホテルを出発してダイビングステーションへ。
心配なのは海のコンディション。しかし昨日まで滞在していた「嵐を呼ぶ女」なるゲストが、日本に帰った後なので大丈夫だろう。
彼女がいる間は風が強かったり、波があったりとパッとしなかったようだが、この日は朝から青空が広がり風も無く絶好の海日和のようだった。「嵐を呼ぶ女」さんの伝説はすごく、沖縄などに行っても昨日まではピーカンだった天気が一瞬にして崩れ、台風の少なかった昨年でも台風を呼び込んだとか。昨日もマニラ経由で帰ったそうだが、彼女がマニラにいるころまでマクタン島は波風があったそうだ。恐るべし「嵐を呼ぶ女」。でも昨日で帰ってくれてありがとう、おかげで気持ちよく潜れた。
ダイビングステーションは目の前がすぐビーチ。ビーチからボートに乗れる便利な場所だ。ボートは安定性を増すために、本体の両脇に長細い浮きが付いている、「ダブルアウトトリガー」と呼ばれるタイプなので、揺れが少なくらくちんだった。


最初のポイント「ヒルトガン」へ

日本は正月明けの寒い時期だというのに「嵐を呼ぶ女」の去った海と空は真っ青で、肌に当たる太陽の光が心地よい。穏やかな海面をぼくたちを乗せたボートが滑るように進み、最初のポイント「ヒルトガン」へ向かった。
ヒルトガンは魚類保護区になっており、入海料として300ペソが必要。セッティング済みの器材を背負わせてもらってジャイアントストライドでエントリー!さすが保護区、ツバメウオやムスジコショウダイが群れ、アイゴやヒメジの仲間がそこらじゅうに泳ぎまわっている。サンゴの周りにはスズメダイやキンギョハナダイの仲間。小さな穴にはイソギンポやカエルウオが可愛い顔を覗かせている。一本目の体慣らしのダイビングにはもってこいの場所だ。
いよいよ2本目からピーコムドリームさん得意のマクロポイントだ。まずはドロップオフ25m地点のヤギに生息するピグミーシーホース。ぼくが10年前にインドネシアのクンクンガンベイで初めて出遭って撮影したときは、まだまだマイナーな魚で写真もほとんどなかった。しかしこの10年の間でいろいろな海域で発見され、日本でも見られるようになったのには驚きである。10年ぶりのピグミー君は相変わらず何処にいるのかわからず、ガイドさんに指を指されてようやく判った。それにしても小さいなー、ニコノスの35㎜の接写ではどこに居るのかわからないんだろうなぁ。
その少し上にはニシキフウライウオが恥ずかしそうに、斜め下を向いて浮かんでいる。その周りの岩穴やサンゴに目を向けると、ベニハゼやオヨギハゼの仲間がいたるところで見つかる。稲見さんが荒俣先生に付きっきりでハゼ類の居場所をガイドしていた。魚だけではなく頭に大きなトサカをつけたイソコンペイトウやピンクスワットロブスターをはじめ、海綿の中に潜むエビなどマクロ好きが泣いて喜ぶ稀種珍種を次から次に探し出しては教えてくれた。恐るべしピーコムドリームスタッフ!

サンゴ

サンゴの周りにハナダイの仲間が群れる

ベニハゼsp

赤白の縞模様がおしゃれなベニハゼの一種

ニシキフウライウオ

巧妙な擬態師・ニシキフウライウオ

ピンクスワットロブスター

珍種の中の珍種!ピンクスワットロブスター

真ん中に見えるピンク色のが、イソコンペイトウガニ


シュノーケンリングで意外な発見

イシヨウジ

イシヨウジ

2本目を終え、ダイビングステーションへ戻り昼食休憩をと思っていたら、先生から目の前の浜でシュノーケリングをしないかと誘われ、お供させていただいた。アマモが茂り、イシヨウジやトゲヨウジ、緑色のベラなどが泳ぎ回っていた。ふと、サンゴ塊の上を見るとオコゼの仲間が2匹向き会っていた。どうやら求愛行動をしているようだ。ちょっとしたシュノーケリングでもおもしろい観察ができた。

藻場

藻場で戯れる魚たち

オコゼ

オコゼの仲間


RADIAL FILEFISH(スダレカワハギ)のポイントへ

3本目は先生リクエストの「RADIAL FILEFISH」こと「スダレカワハギ」のポイントへ。
海底にはウミアザミが群生し、ポリプを閉じたり開いたりしておいでおいでをしている。。近づいてその中をよーく観察していると、ポリプの間に3cmほどのRADIAL君が!恥ずかしいのか伏せ目がちに隠れている。ニコノスの接写枠を近づけると、もう少しのところでススーーと移動し、なかなか近寄れない。しつこく追うとサッと隣のウミアザミの塊の中に逃げ込み隠れてしまう。稲見さんがうまく誘導してくれ、ようやく先生もぼくもシャッターを切ることができた。小さくて可愛らしく、シャイなカワハギに癒された。
そして4本目はフリーダイビング。ダイビングステーション前の少し沖でのダイビング。自由に好きなことができるので、マイペースに魚たちを観察した。チョウチョウコショウダイの4cmほどの幼魚と戯れたり、ガンガゼの長い棘の間に隠れるヨウジウオやウバウオ、岩穴に並ぶベニハゼ類などを観察していたらあっという間に1時間が経ってしまい、本日のダイビングは終了! 1日4本プラス昼休みのシュノーケリングと結構頑張った。各ポイントまでのボートの移動時間が、長くても20分ぐらいの近場だったので、あまり疲れることもなく楽チンだった。
生き物談議に花が咲く夕食が終わると、水中写真家Yoshiさんがスライドショーを披露してくれた。水中映像祭で発表した作品や、最近のすばらしいマクロの世界を撮ったものを惜しげもなく披露していただき、すごく刺激になった。
荒俣先生も自分でお撮りになった写真のチェックを行っていたが、RADIAL君の写真がうまく撮れていなかったようで明日また再チャレンジということになった。

スダレカワハギ

ウミアザミに隠れるスダレカワハギ


2日目突入

2日目は翌日の早朝帰国に備え、午前中2本のみ潜って午後は空港から来る途中で見つけた、水族館とスーパーマーケットで買い物をすることになった。
前日に引き続き、風もなく最高のコンディションの中、一本目はベニハゼ類を一通り観察した。浅瀬ではトウゴロウイワシの仲間だろうか、太陽の光を反射してキラキラとした大きな群れが形を変えながら動いていた。その美しさと動きの面白さにしばし見とれてしまった。
そして、最後の一本は荒俣先生のリクエストである。「RADIAL FILEFISH」ポイントへ。
ここも海底にウミアザミが群生し、いかにもRADIAL君がいそうな場所だった。さっそく稲見さんがRADIAL君を発見し、先生が熱心に撮影された。何枚も撮られたようで、帰ってからチェックをされ今日はOKとのことだった。念願のRADIAL君が上手くとれて本当に良かったな~!これで、セブでのダイビングは終了。
Yoshiさんをはじめとする、マクロシーンの達人が揃ったピーコムドリームさんだったからこそ、短い時間だったがたくさんの珍種を観察できたのだろう。 今回は時間が無く状況も判らなかったので、毎回水中であれもこれも見なければ…とオロオロしているうちに終わってしまった。次回はもう少しゆっくりと時間をとって、マクロ三昧してみたい。サンゴ域ばかりでなく泥場の共生ハゼの宝庫のポイントもあったり、オニヒトデを食べるイソギンチャクもいるようで、次回是非見てみたいものである。

群れ

アフターダイブに、「スーパー」と「水族館」を見学

ダイビング2日目の午後は、ワゴン車のタクシーでスーパーマーケットと気になっていた水族館を見学した。水族館屋として、干物を愛するヒモニストとして、是非行かなくてはと。
まずは空港近くのスーパー。多くの人が買い物をして、結構賑わっている。 魚関係の食材などがないかなぁと探していると、ありました、ありました。 魚の缶詰が、缶詰コーナーの一角に所狭しと並んでいた。ほとんどがイワシの缶詰のようだ。買って帰りたかったが重いので断念した。
その先の棚には袋詰めにされた愛する干物たちが大量に並んでいた。ムロアジ、ヒメジ、アイゴ、カタクチイワシのジャコにイカ。それぞれ大きいものは開かれて、イワシのように細身のムロアジは丸のまま干され袋詰めにされていた。凄いなー!さすが熱帯地方、魚種がマニアックだ!
これは是非買って帰らねば、と何種類か買い帰って焼いてみた。しかし塩が強くてしょっぱいこと。焼きたての熱いうちに皮をはいで骨をとり、実を細かくちぎっておいたものをお茶漬けにしたら結構いけた。現地の人はどのようにして食べているのだろう。今度訪れた時聞いてみたい。スープなどに入れるのかなぁ…ちなみに干物を焼く前の匂いは、ちょっと「くさやチック」な香ばしい匂いだった。


主にイワシの缶詰め

ムロアジの開き

カラフルな缶詰め

店頭に並ぶ干物たち

スーパーの次は、とても気になっていた水族館へ。
大通りに面した水族館の周りには、いくつかの目立つ看板があり「生きているサメあり」や「タッチコーナーもあるよ」などと書かれていた。スパの建物の地下にあるこの水族館は「Mactan Island Aquarium」。
セブ島総合情報サイト「セブポットウェブ」によると、 「セブの海の魅力にとりつかれたイギリス人が、何とセブ・マクタン国際空港から車で15分程の距離にプライベート水族館を造っちゃいました。セブ、マクタン島周辺に生息する魚たちが大集合!“マクタンアイランド・アクアリウム”は、手作りの水族館です。「世界にここにしかいない」とか「驚くようなショー」があるわけではありません。オープンしたきっかけは、セブ周辺には本当にたくさんの種類のカワイイ魚たちが生息していて、セブの宝である魚たちの事を、もっと知ってもらいたいと思ったからです。」とある。
また、「魚の名前など、ご質問があればスタッフがあなたと一緒に館内を回ることもできますので是非ご来館ください。」と書かれていた。ぼくたちが入館したときには他にお客さんはいなく、スタッフの方がマンツーマンで館内の案内をしてくれた。
館内は大型の水槽は無く、昔の日本の水族館のように個水槽が壁際に並んでいた。ぼくはこういう形式が割りと好きなのだ。これは、汽車の窓のように水槽が並んでいるので「汽車窓式水槽」と言われる。これといって驚くような種はいなかったが、マクタン島の浅瀬にいる魚が展示されているので、ダイビングで撮影しそこなった種などを押さえに撮影するのには良いだろう。
一つびっくりしたのが、入り口を入ってすぐのところにある、ヘビの水槽。ウミヘビではなく、淡水中というか水面で生活しているヘビだという。ウミヘビならぬカワヘビ。水面で頭を下にして底をにらんでいた。 タッチ水槽ではウニやナマコに自由に触ることができる。そして、出口付近にはツマグロの入った大き目の水槽がある。この水槽は上部がオープンになっていて、上から覗き込むタイプ。60cmほどのツマグロが泳いでいた。 案内してもらいながら回ったので30分ぐらいで廻ってしまった。
「入館料:250ペソ、開館時間:10:00~18:00、休館日なし」ということ。 いつまで続くか若干疑問の水族館なので、行ってみたいと思った方はお早めに!


この建物の地下に水族館がある

ツマグロを上から眺める

下を凝視するカワヘビ

汽車窓式の展示方法

帰国

帰国はセブ・マクタン島空港からの直行便の成田行きで、出発がAM7:50と早かった。朝6時過ぎに空港へ向かったが、到着してびっくり。出国審査の長い列ができている…。帰りは少し早めに空港入りしたほうが良さそうだ。呆然としていたが、思ったより早く審査が終わり、重い荷物を預けてほっと一息。
と思ったら、キャリーにくくって引っ張っていたペリカンケースが空港係員の目に留まり、中身を聞かれた。カメラ機材ということで持ち込みは許可されたものの、キャリーは機内預けにさせられてしまった。重いからキャリーで引っ張っているのに、そこで没収されてしまいその後重くてたまらなかった。
そして出国税の550ペソを払い手荷物検査も終え、出発ターミナルに向かおうとした。が、その前に家内に免税品をと思い、免税店に向かった。こじんまりとした免税店でシャネルなどブランド品の種類が少なくがっかり。セブからの直行便を使われるなら免税品は成田で買うのが得策かもしれない。
またレジが一つしかない上、観光客が残ったペソを使いきろうと小物を少しずつ抱えて並んでいるので、買うものがあればここも早めに行ったほうがよいだろう。
今回の旅は短期間ながら、実に内容の濃い体験ができた。Yoshiさんをはじめスタッフの皆さん、ありがとうございました!!そして、忙しい中お誘いをいただいた荒俣先生、ありがとうございました。

荒俣さんご夫妻

荒俣さんご夫妻。マクタンアイランドアクアリウムにて


今回お世話になったピーコムのヨシさん

ピーコム ピーコム

Pcom Dream
Diving Service
http://www.pcomdreamcebu.com

セブ島・マクタンにある水中写真家・Yoshi平田さんのお店。写真派、マクロ派の方が大満足できるショップです。また、Yoshiさんがオーナーシェフとして作る、ホテルの料理も大変好評です。


TRAVEL INFORMATION
・国名 フィリピン共和国
・首都 マニラ
・時差 日本時間マイナス1時間。
・言語 公用語はビサヤ語、タガログ語、英語。大きなホテル、レストラン、Dサービスでは日本語が通じることも。
・ビザ 21日以内の観光には不要。パスポートは滞在日数+2ケ月の有効残存期間が必要。
・通貨 フィリピン・ペソ(PHP)
USドルが使える施設も多い。
・両替 現地では、ホテル、市内、銀行などで日本円からの両替が可能。
・電話 国番号は63
・電圧 110/220V、60Hz。
コンセントの形はホテルによってまちまちなので、複数コンセントタイプに対応する交換プラグと変圧器が必要。
・チップ レストランなどでは10%。ホテルなどでは、ポーターやベッドメイキングに20PHP程度。
・水 水道水は飲まないほうがいい。飲料水にはミネラルウォーターを。

・現地公共交通機関
セブ・マクタン島内では乗り合いバスや簡易タクシー(トライシクル)などを気軽に利用できる。もちろんタクシーの数も多い。